研究レポート

京都ハンナリーズ 2026-27シーズンをスポンサー視点から考察する

― 成長の「光と影」、地域密着経営の「功と罪」 ―

― B.PREMIER移行期におけるスポンサー構造の変容と小口スポンサーの位置づけ ―

本レポートは査読を経ていません。記載内容は著者の見解であり、言及した団体・企業の見解を示すものではありません。

要旨

京都ハンナリーズは、2023-24シーズン以降、観客動員、スポンサー収入、売上高を急速に伸ばし、2026-27シーズンから始まるB.PREMIERへ参入した。2021年度に約6億円だった売上規模は、クラブの2026-27シーズン新体制発表によれば2026年度に18億円へ到達する見込みであり、2030年30億円、2036年50億円という成長目標が掲げられている。この成長は、競技力向上、新アリーナ開業、ファンベース拡大のために不可欠な経営基盤を形成するという意味で大きな「功」である。一方で、成長に伴ってスポンサー制度が高単価化・階層化すると、従来クラブを支えてきた小規模企業が参加しにくくなる可能性がある。本稿では、チケットパートナーの最低協賛額が2025-26シーズンから10万円から30万円へ引き上げられたとの関係者情報を問題提起の起点とし、公開一次資料によって確認できるスポンサー数、スポンサー収入、B.PREMIERの事業要件、2026-27シーズンのパートナー階層とクラブの中長期成長戦略を分析する。その結果、京都ハンナリーズの現在の経営は「多くの地域企業が少額でも参加できる共同体型スポンサーシップ」から、「高い対価と高い権利価値を交換する投資型スポンサーシップ」へ重心を移しつつあると考えられる。ただし、これは直ちに小口スポンサーの切り捨てを意味するものではない。むしろ問題は、成長に必要な高単価スポンサーの獲得と、地域の小規模事業者がクラブとの関係を維持できる低価格の入口を、いかに同時に設計するかにある。

1.問題の所在 ― 成長するクラブは誰のものなのか

京都ハンナリーズを2023-24シーズンから追うと、クラブは明確な成長軌道にある。2023-24シーズンのクラブ決算では、売上高が前年度の約10.58億円から約14.06億円へ拡大し、その主因としてパートナー企業が約60社増加して計320社となったこと、スポンサー収入が約7.72億円から約9.59億円へ増加したことが示されている(京都ハンナリーズ, 2024a)。2024-25シーズン終了時にもクラブはパートナー企業を「約330社」としており、地域企業を広く巻き込む営業活動がクラブ成長の重要な基盤だったことが分かる(京都ハンナリーズ, 2025a)。

この時期の京都ハンナリーズの成長を特徴づけていたのは、単に一部の大企業から巨額の協賛金を得ることだけではなく、多数の企業がクラブを支える構造を作った点である。京都には上場企業や世界的メーカーが存在する一方、老舗、小売、飲食、建設、医療、士業、運送、製造など地域に根差した中小企業が非常に多い。プロスポーツクラブがこうした企業群を「京都を応援する」という共通目的で束ねることには、広告媒体としての価値を超えた地域ネットワーク形成の意味があった。

しかし、2026-27シーズンからB.LEAGUEはB.PREMIERを中心とする新制度へ移行した。クラブに求められる経営規模は大きくなり、京都ハンナリーズ自身も2030年に売上30億円、2036年に50億円という目標を掲げている(京都ハンナリーズ, 2026a)。この段階では、スポンサー制度にも「地域の仲間を増やす仕組み」だけでなく、「限られた営業資源からより大きな売上を生み出す仕組み」としての役割が強く求められる。ここに、クラブ成長の光と影が生じる。

本稿の問いは単純である。クラブが強くなり、事業規模が拡大し、スポンサー価値が高まることは望ましい。しかし、その過程で、かつて10万円で参加できた地域企業が30万円を支払わなければ同じ入口に立てなくなったとすれば、その成長は誰にとっての成長なのか。プロスポーツクラブが地域の公共的資産でもあるならば、経済合理性だけでスポンサーを選別することは、長期的に地域との関係を弱めないのか。この問題をスポンサー視点から考察する。

2.B.PREMIERがクラブ経営に要求する「規模」

スポンサー制度の変化をクラブ独自の方針だけで説明することは適切ではない。背景にはB.LEAGUE全体の構造改革がある。B.PREMIERでは、従来のように競技成績だけで昇降格するリーグではなく、入場者数、売上高、アリーナなどの事業基盤が参入・継続資格の重要な条件となる。B.LEAGUEが公表した2027-28シーズンの継続資格認定基準では、平均入場者数4,000人かつ売上高9億円、または平均入場者数3,000人かつ売上高12億円という基準が示されている(B.LEAGUE, 2025a)。

京都ハンナリーズは2024-25年度の審査指標で平均入場者数4,187人、売上高14.8億円とされ、B.PREMIER資格を確保している(B.LEAGUE, 2025b)。したがって現時点で基準ぎりぎりというわけではない。しかし、リーグ上位クラブを見ると売上規模は20億円、30億円を超える。競技力を継続的に高めるには選手人件費、コーチングスタッフ、練習施設、分析・医療体制、興行演出、マーケティング、営業人員への投資が必要となる。京都が日本一を目指すなら、最低基準を満たすだけでは足りない。

2026-27シーズンの新体制発表で、クラブは2021年度約6億円から2026年度18億円への成長見込みを示し、今季のチーム予算として約6億円を確保したと説明している。さらに2028年度には自力収益の中でサラリーキャップ8億円を使い切り、その後はスター選手条項を活用した追加投資も計画している(京都ハンナリーズ, 2026a)。これは「勝つためには稼ぐ必要がある」というB.PREMIERの思想を非常に明確に表している。

この意味でスポンサー単価の引き上げには経営合理性がある。営業担当者が一社と契約し、ロゴ管理、チケット提供、請求、更新、イベント対応、問い合わせ対応などを行うコストは、協賛額10万円でも300万円でもゼロにはならない。クラブの営業人員が有限である以上、一社当たりの協賛単価を高めることは売上成長の効率を高める。大口スポンサーには高い露出価値やホスピタリティを提供し、その対価をチーム強化へ再投資する。株式会社として見れば合理的な戦略である。

3.10万円から30万円へ ― 金額が持つ意味

本稿の問題意識の起点は、チケットパートナーの最低協賛額が2025-26シーズンから10万円から30万円へ引き上げられたという関係者情報である。公開ウェブ資料では2025-26シーズンの「30万円」という価格そのものを直接確認できる資料を確認できなかったため、この点は関係者から提供された情報として扱う。一方、過去に10万円が小口スポンサーの入口だったことは一次資料から確認できる。2018-19シーズンのサポーティングパートナー約款には協賛金が「1口10万円」と明記されている(京都ハンナリーズ, 2018)。また、クラブが2024年に公開した安藤不動産へのインタビューでも、同社とハンナリーズの関係は「10万円のチケットサポートパートナーから始まった」と説明されている(京都ハンナリーズ, 2024b)。

10万円と30万円の差は、大企業にとっては必ずしも大きくない。しかし、小規模事業者にとっては意味が異なる。年間10万円であれば、広告効果を厳密にROIで説明できなくても、「地元のチームを応援したい」「取引先や従業員と観戦したい」「京都の企業として名前を連ねたい」という地域貢献費・交際費に近い意思決定が可能である。30万円になると、経営者の個人的な応援だけではなく、広告宣伝費としての合理性や社内説明を求められる可能性が高まる。

つまり金額が3倍になることは、単なる価格改定ではない。それはスポンサーになるための意思決定基準を変える。10万円の制度が「参加」を購入する制度だったとすれば、30万円の制度はより明確な「権利」や「効果」を購入する制度へ近づく。結果として、クラブと企業の関係も、共同体的支援から商取引的スポンサーシップへ移行しやすくなる。

この変化を「弱者切り捨て」と表現することには慎重であるべきだ。クラブが小規模企業を排除する意図を公表しているわけではなく、現在もチケットパートナー欄には地域企業を含む多数の企業が掲載されている(京都ハンナリーズ, 2026b)。しかし、意図と結果は別である。最低価格を引き上げれば、支払意思はあっても支払能力が追いつかない企業が発生する。したがって「切り捨て」を経営者の意図として断定するのではなく、「経済的な参加障壁が上昇し、小口企業が離脱しやすい制度になった可能性」として評価するのが妥当である。

表1 スポンサー構造をめぐる主要指標
時期 確認できる事実 意味 出典
2018-19 小口協賛は1口10万円 地域企業が参加しやすい入口 京都ハンナリーズ, 2018
2023-24 パートナー計320社、約60社増 企業数の拡大が成長を牽引 京都ハンナリーズ, 2024a
2024-25 終了時パートナー約330社 広い企業基盤を維持 京都ハンナリーズ, 2025a
2024-25年度 売上14.8億円、平均入場者4,187人 B.PREMIER資格を確保 B.LEAGUE, 2025b
2025-26以降 チケットパートナー最低30万円との関係者情報 小口層の参入障壁上昇 提供情報(公開資料で価格未確認)
2026-27 2026年度売上18億円見込み、チーム予算約6億円 規模拡大・競技投資を加速 京都ハンナリーズ, 2026a
2030/2036 売上30億円/50億円目標 スポンサーにも高収益性を要求する圧力 京都ハンナリーズ, 2026a

4.「功」― 高単価化がもたらす競技力と事業力

スポンサー単価の上昇を批判するだけでは、現在のプロスポーツ経営を正確に捉えられない。第一の「功」は、競技力への投資原資を確保できることである。B.PREMIERでは、強い選手を獲得し、長期的に戦力を維持するためには大きな人件費が必要になる。京都ハンナリーズが2026-27シーズンに約6億円のチーム予算を確保したという事実は、クラブが「地域に愛されるだけのチーム」から「日本一を争うチーム」へ移行しようとしていることを示す(京都ハンナリーズ, 2026a)。スポンサー収入が増えなければ、この競技投資はファンのチケット価格やオーナー資金への依存を強める。

第二の功は、スポンサーに提供できる価値そのものを高度化できる点である。2026-27シーズンのホームゲームでは、SEARSシート、公建シート、長栄シート、さくらぎ歯科シート、ムゥイングシートなど企業名を冠した観戦商品が多数設けられている(京都ハンナリーズ, 2026c)。スポンサーは単に会場にロゴを掲出するだけではなく、観客体験そのものを企業ブランドと結び付けることができる。こうした権利は従来型の看板広告よりもストーリーを作りやすく、企業にとって協賛金をマーケティング投資として説明しやすい。

第三の功は、大企業の資金を地域貢献へ転換できることである。例えば安藤不動産は、かつて10万円のチケットサポートパートナーから関係を始め、現在はメジャーパートナーとして子どもをホームゲームへ招待するシート企画を実施している。2026-27シーズンにも「JACKSON・LEON・KANTA SEAT」をホーム30試合で展開している(京都ハンナリーズ, 2026d)。またエムズトランスポート協賛の「エムズシート」は、障害のある観客を優待価格で招待する取り組みを2015-16シーズンから継続している(京都ハンナリーズ, 2026e)。大口化したスポンサーシップが社会的価値へ再配分されるなら、スポンサー単価の上昇は必ずしも地域性の喪失を意味しない。

第四の功は、2028年開業予定の約8,900人規模の京都アリーナを持続的に運営する基盤を作れることである。クラブは2025-26シーズンの段階から「チケット・パートナーセールスを軸とした事業面での積み上げ」を明言している(京都ハンナリーズ, 2025b)。大規模アリーナでは、試合日の売上だけでなく、VIP、法人ホスピタリティ、ネーミング、イベント、広告などBtoB収益の重要性が高まる。スポンサー制度の高付加価値化は、新アリーナ時代を見据えた準備として合理的である。

5.「罪」― 小口スポンサーが失われると何が失われるのか

しかし、スポンサーの価値を金額だけで評価すると、クラブは重要な無形資産を失う可能性がある。小口スポンサーの価値は協賛金額そのものだけではない。地域の飲食店、工務店、医院、士業、運送会社、小売店などがスポンサーになると、店頭にポスターが貼られ、従業員が試合へ行き、取引先との会話にハンナリーズが登場する。経営者自身が地域の口コミ発信者になる。これは広告換算額では測りにくい「地域内の分散型メディア」である。

2023-24シーズンにクラブが約60社のパートナー増加を売上成長の主要因として自ら説明したことは象徴的である(京都ハンナリーズ, 2024a)。このモデルでは、一社当たりの金額だけでなく「何社がハンナリーズを自分たちのクラブだと思っているか」が経営資産だった。320社、330社という企業群は、単なる請求先一覧ではない。京都の経済社会の中にクラブの支持基盤を作るネットワークだったと考えられる。

最低協賛額が10万円から30万円へ上がれば、仮に協賛収入総額が維持・増加したとしても、参加企業数が減る可能性がある。例えば10万円で30社が参加すれば300万円、30万円で10社が参加しても同じ300万円である。会計上の売上は同じだが、地域との接点は30社から10社へ減る。スポンサー経営を売上高だけで評価すると、この差は見えない。

さらに、スポンサー階層が上がるほど、クラブが提供する営業資源も上位企業へ集中しやすい。2026-27シーズンの公式パートナー一覧は、トップユニフォーム、メジャー、プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズ、チケットという多層構造になっている(京都ハンナリーズ, 2026b)。階層化自体は一般的なスポーツビジネスの仕組みであり問題ではない。しかし、上位スポンサーだけが選手接点、特別席、イベント、広告露出、営業担当者との関係などを享受し、最下層スポンサーの体験価値が薄くなるなら、小口スポンサーは「応援するためにお金を払うだけ」の存在になりかねない。

この点は、クラブが掲げる「街と人を結び、『京都』に夢と感動と熱狂を生み出し続ける」というミッションとの整合性が問われる部分である(京都ハンナリーズ, 2025b)。「街と人を結ぶ」のであれば、資金力の大きな企業だけを結ぶのでは不十分である。京都の地域経済を構成する中小企業、個人商店、スタートアップ、医療機関、伝統産業などがクラブと接続できる仕組みを残すことも、ミッションを実現する経営活動の一部と考えられる。

6.スポンサーの「選別」は悪なのか ― 経営合理性との緊張関係

ここで重要なのは、「大口スポンサーを優遇すること=悪」と単純化しないことである。スポンサーシップは寄付ではなく契約であり、支払金額が異なれば提供される権利が異なるのは当然である。1000万円を支払う企業と30万円を支払う企業に同じ露出、同じ座席、同じ選手接点を提供すれば、上位スポンサーの商品価値が成立しない。クラブが事業として成長するためには価格差別化と権利設計が必要である。

むしろ問題は、上位スポンサーを優遇することではなく、下位スポンサーに「その金額でも参加する意味がある」と感じられる価値を設計できているかである。大口スポンサーには露出、ホスピタリティ、選手肖像、冠企画など高コストの権利を提供し、小口スポンサーには地域企業同士のネットワーク、観戦機会、デジタル上の認証、地域貢献プロジェクトへの参加権など、クラブ側の限界費用が比較的小さい価値を提供することは可能である。

興味深いのは、京都ハンナリーズ自身が小口スポンサーから大口スポンサーへ成長した成功事例を持っていることである。安藤不動産は2012年に10万円のチケットサポートパートナーから始まり、後にメジャーパートナーへ成長した(京都ハンナリーズ, 2024b)。これは低価格の入口が単なる安売りではなく、将来の大口顧客を育てる「スポンサー育成ファネル」として機能し得ることを示している。もし最初から最低価格が高ければ、こうした関係が始まらなかった可能性もある。

したがって、小口スポンサー制度を残すことは慈善ではない。将来の大口スポンサー候補を獲得する営業戦略でもある。小規模企業がクラブと接点を持ち、チケットを利用し、従業員や顧客の反応を見て、スポンサー効果を実感し、翌年に増額する。この階段を用意することがスポンサーLTV(顧客生涯価値)を高める。短期的な営業効率だけを見て入口を30万円、50万円へ上げ続けると、将来のスポンサー候補の母集団を狭める危険がある。

7.2026-27シーズンに見えるもう一つの変化 ― 価格最適化の思想

2026-27シーズンの変化はスポンサーだけではない。一般チケットにはダイナミックプライシングが導入され、需要に応じて価格を変動させる仕組みが採用された(京都ハンナリーズ, 2026c)。また、8試合をまとめたパックチケットなど、顧客の利用頻度と支払意思に応じて商品を細分化している(京都ハンナリーズ, 2026f)。これはクラブ全体が「一律価格で広く提供する」段階から、「顧客ごとの支払意思と価値に応じて収益を最適化する」段階へ進んでいることを示している。

スポンサーの高単価化も、この文脈に置けば理解しやすい。B.PREMIER、新アリーナ、チーム強化という大型投資を前に、クラブは座席、スポンサー権利、ファン会員など保有資産の単価を高めようとしている。経営学的には収益管理の高度化であり、クラブがプロフェッショナルなスポーツエンターテインメント企業へ成長している「光」である。

一方、スポーツクラブの商品は一般企業の商品と完全には同じではない。地域クラブは、ファンやスポンサーが長年作り上げた文化、ボランティア、口コミ、地域アイデンティティの上に成立する。価格最適化を進めすぎると、「昔から支えてきた人より、高く払える人が良い席・良い権利・良い関係を得る」という印象を生みやすい。これは経済合理性として正しくても、共同体の心理として反発を生む可能性がある。

この矛盾は、B.PREMIER時代の多くのクラブが直面する問題である。リーグはクラブに売上成長を要求する一方、クラブは地域密着を理念として掲げる。売上を伸ばすほど価格は市場化し、地域性を守ろうとするほど低価格の参加機会を残す必要がある。京都ハンナリーズのスポンサー政策は、その矛盾が可視化される先行事例として捉えることができる。

8.小口スポンサーを「残す」のではなく再設計する

では、成長と地域性を両立するために何が必要か。第一に、30万円のチケットパートナーとは別に、10万円前後の「コミュニティパートナー」や「京都応援パートナー」のような入口を設ける方法が考えられる。ここでは大量の紙チケットや高価な広告権を付与せず、公式サイトへの社名掲載、デジタル認定証、年1回のパートナー交流会、地域貢献活動への参加権などに限定する。クラブ側の運営コストを抑えながら参加企業数を維持できる。

第二に、スポンサー企業数そのものをKPIとして残すことである。売上30億円、50億円という目標だけを追えば、一社当たり単価を上げ、少数の大口企業へ営業資源を集中することが合理的になる。しかし「京都府内スポンサー企業数」「新規小口スポンサー数」「小口から上位カテゴリーへ昇格した企業数」「スポンサー継続率」を経営指標として公表すれば、地域ネットワークの厚みも経営成果として評価できる。

第三に、小口スポンサーを地域貢献プログラムと結び付けることである。例えば複数の10万円スポンサーを束ね、学校へのボール寄贈、子ども招待、北部地域からの観戦バスなど、一社では実現できない事業を共同で実施する。企業は単なるロゴ掲載ではなく「自社も京都の子どもを支えた」という明確な成果を得られる。クラブにとっても、多数の企業を束ねることで地域貢献の規模を拡大できる。

第四に、スポンサーの階層を「金額だけの序列」に見せない工夫が必要である。メジャー、プラチナ、ゴールドという階層は商業権利の違いとして必要だが、地域貢献への参加やクラブへの支援歴は別軸で可視化できる。10年以上支援する30万円スポンサーが、初年度の高額スポンサーより地域との関係が薄いとは限らない。支援年数、地域活動、従業員参加などを称える制度を設ければ、「金額がすべて」という印象を和らげることができる。

9.「光と影」「功と罪」の総合評価

京都ハンナリーズの2026-27シーズンは、クラブ史における大きな転換点である。B.PREMIERへの参入、2028年の新アリーナ、2030年30億円・2036年50億円という売上目標、約6億円のチーム予算など、クラブは明確に「地方のプロバスケットボールクラブ」から「全国トップクラスのスポーツエンターテインメント企業」へ進もうとしている。そのためにスポンサー単価を引き上げ、大企業との関係を深めることには十分な合理性がある。これが光であり、功である。

その成長によって、より良い選手を獲得できる。試合演出を高度化できる。新アリーナを満員にするための広告投資ができる。地域の子どもや障害のある人を招待するスポンサー企画も拡大できる。クラブが赤字やオーナー依存から脱し、自力で稼げる組織になることは、長期的には地域にとっても利益である。

しかし影も存在する。京都ハンナリーズは、2023-24シーズンに「約60社増、計320社」という広がりを成長の成果として示したクラブである。そのクラブが、数年後には一社当たりの支払能力をより強く問う構造へ移行するなら、成長の定義そのものが変わったことになる。スポンサー売上が増えても、地域の小さな企業が「自分たちもハンナリーズの一員だ」と感じられなくなるなら、財務上の成長と地域基盤の成長は一致しない。

ここで「罪」と呼ぶべきものがあるとすれば、大企業を優遇すること自体ではない。より多く支払う企業へより多くの権利を提供することはビジネスとして当然である。問題は、クラブが成長する過程で、これまで支えてきた小さな企業の参加価値を再設計せず、単純な最低価格の引き上げだけでふるい落としてしまうことである。もしそれが起きれば、短期的には営業効率が上がっても、長期的には地域に張り巡らされた支持ネットワークを細くする。

逆に、30万円以上を支払える企業から十分な収益を得ながら、10万円程度でも参加できる別カテゴリーを残し、そこから上位スポンサーへ育てる仕組みを作れば、成長と地域密着は対立しない。安藤不動産が10万円の入口からメジャーパートナーへ成長した歴史は、その可能性をクラブ自身がすでに証明している。

10.結論

2026-27シーズンの京都ハンナリーズをスポンサー視点で見ると、最も重要な変化は「スポンサーを増やすクラブ」から「スポンサー価値を高めるクラブ」への移行である。B.PREMIER、新アリーナ、競技力強化という環境下では、この転換は避けにくい。クラブが売上18億円、30億円、50億円という段階へ進むためには、大口スポンサーの獲得と協賛単価の上昇が必要である。

しかし、プロスポーツクラブは通常の広告会社ではない。スポンサーは顧客であると同時に、地域におけるクラブ文化の担い手でもある。特に京都ハンナリーズは、多数の地域企業を巻き込むことで成長してきた。その歴史を考えれば、スポンサー制度の成功を協賛金総額だけで評価するべきではない。何社が参加しているか、どれだけ長く支援しているか、小口企業が上位スポンサーへ育っているか、地域活動に何社が参加しているか、といった指標も同時に見る必要がある。

したがって、本稿が2026-27シーズンの京都ハンナリーズに提示する評価は二面的である。高単価化はクラブを強くし、B.PREMIERで戦うための経営基盤を作る「功」である。一方、その過程で小規模な地域企業が参加できる入口を失わせるなら、それはクラブが築いてきた地域ネットワークを自ら狭める「罪」になり得る。重要なのは10万円に戻すか30万円を維持するかという単純な価格論ではない。大口企業には高い投資価値を、小口企業には低コストでも所属感と参加価値を提供する、二層以上のスポンサー設計が必要なのである。

京都ハンナリーズが2030年、2036年に真に「京都を代表するクラブ」になっているかを判断する指標は、売上高や勝利数だけではない。新アリーナのVIPルームに大企業の経営者が集まる一方で、京都の街角の小さな店にもハンナリーズのステッカーが貼られ続けているか。その両方を実現できるかどうかが、B.PREMIER時代における地域密着型プロスポーツ経営の成熟度を測る尺度になると考える。

参考文献・資料

B.LEAGUE(2025a)「2025年10月 B.LEAGUEクラブライセンス判定結果(10月30日発表分)」https://www.bleague.jp/basketlive_news_detail/id=541287 (2026年10月4日閲覧)

B.LEAGUE(2025b)「2025年10月 B.LEAGUEクラブライセンス判定結果」https://www.bleague.jp/news_detail/id=539801 (2026年10月4日閲覧)

京都ハンナリーズ(2018)「2018-19 Supporting Partner 約款」https://hannaryz.jp/files/user/_/sponsors/img/pdf/18-19supportingpartner.pdf (2026年10月4日閲覧)

京都ハンナリーズ(2024a)「B.LEAGUE 2023-24シーズン(2023年度)クラブ決算概要発表のお知らせ」https://hannaryz.jp/news/detail/id=21104 (2026年10月4日閲覧)

京都ハンナリーズ(2024b)「パートナーインタビュー 安藤不動産株式会社 代表取締役社長・安藤秀基様」https://hannaryz.jp/news/detail/id=21048 (2026年10月4日閲覧)

京都ハンナリーズ(2025a)「2024-25シーズン終了のご挨拶」https://hannaryz.jp/news/detail/id=21372 (2026年10月4日閲覧)

京都ハンナリーズ(2025b)「2025-26シーズン 新体制発表記者会見レポート」https://hannaryz.jp/news/detail/id=21612 (2026年10月4日閲覧)

京都ハンナリーズ(2025c)「B.LEAGUE 2024-25シーズン(2024年度)クラブ決算概要発表のお知らせ」https://hannaryz.jp/news/detail/id=21767 (2026年10月4日閲覧)

京都ハンナリーズ(2025d)「チケットパートナー自動更新および自動引き落としシステム採用について」https://hannaryz.jp/news/detail/id=21792 (2026年10月4日閲覧)

京都ハンナリーズ(2026a)「2026-27シーズン 新体制発表記者会見レポート」https://hannaryz.jp/news/detail/id=24736 (2026年10月4日閲覧)

京都ハンナリーズ(2026b)「京都ハンナリーズ チームパートナー」https://hannaryz.jp/sponsors/list/ (2026年10月4日閲覧)

京都ハンナリーズ(2026c)「2026-27シーズン ホームゲームチケット販売概要」https://hannaryz.jp/news/detail/id=24727 (2026年10月4日閲覧)

京都ハンナリーズ(2026d)「安藤不動産 presents JACKSON・LEON・KANTA SEAT実施のお知らせ」https://hannaryz.jp/news/detail/id=24759 (2026年10月4日閲覧)

京都ハンナリーズ(2026e)「2026-27シーズン エムズシート設置のお知らせ」https://hannaryz.jp/news/detail/id=24757 (2026年10月4日閲覧)

京都ハンナリーズ(2026f)「2026-27シーズン パックチケット販売概要」https://hannaryz.jp/news/detail/id=24729 (2026年10月4日閲覧)

京都ハンナリーズ(2026g)「2026-27シーズン ゴールドパートナーの皆様 ご紹介」https://hannaryz.jp/news/detail/id=24889 (2026年10月4日閲覧)

注:チケットパートナー最低協賛額が2025-26シーズンより10万円から30万円へ変更されたとの情報は、関係者から提供された情報に基づく。旧制度の10万円については上記一次資料で確認したが、現行30万円を明記した公開資料は本稿作成時点で確認できなかったため、本文ではその旨を明示した。

引用表記

片岡亮(2026)「京都ハンナリーズ 2026-27シーズンをスポンサー視点から考察する―成長の「光と影」、地域密着経営の「功と罪」――B.PREMIER移行期におけるスポンサー構造の変容と小口スポンサーの位置づけ―」一般社団法人京阪マーケティング・リサーチ機構 研究レポート.https://www.keihan.or.jp/research/reports/hannaryz-2026-27-sponsorship/

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