研究レポート

Bリーグにおける京都ハンナリーズの活躍と地域貢献が地元にもたらす影響(2025-26シーズン)

― 京都全域へ広がったクラブとB.PREMIERへの転換 ―

本レポートは査読を経ていません。記載内容は著者の見解であり、言及した団体・企業の見解を示すものではありません。

1.はじめに

2025-26シーズンの京都ハンナリーズを考える際、最も重要なのは「京都」の意味が変わったことである。それまで京都市を中心として成長してきた京都ハンナリーズは、このシーズンから京都府内全26市町村をホームタウンとするクラブへと活動範囲を広げた(京都ハンナリーズ, 2025)。

一方、競技面では20勝40敗となり、前年の33勝27敗から大きく成績を落とした(京都ハンナリーズ, 2026a)。つまり2025-26シーズンは、「チームとしての苦戦」と「地域クラブとしての拡大」が同時に起こった一年だった。この二つを分けて考えることが、このシーズンを理解するためには重要である。

2.20勝40敗――再び直面した競技面の厳しさ

2025-26シーズン、京都ハンナリーズは60試合を戦って20勝40敗、平均得点74.7点、平均失点81.2点だった(京都ハンナリーズ, 2026a)。前年は33勝27敗、平均82.0得点だったことから、特に得点面の低下が数字に表れている。

プロスポーツクラブにとって勝敗は極めて重要である。地域貢献活動をどれだけ行っても、プロチームである以上、ファンは勝利を期待する。したがって2025-26シーズンは、地域との関係を拡大する一方で、「応援されるクラブ」から「応援され、なおかつ勝つクラブ」へ成長する難しさが改めて示されたシーズンだったと言える。

3.京都府全26市町村がホームタウンへ

2025-26シーズンから京都ハンナリーズは京都市を取りまとめ自治体としながら、京都府内全26市町村をホームタウンとする体制へ移行した(京都ハンナリーズ, 2025)。これは単なる名称上の変更ではない。京都府には京都市だけでなく、宇治、亀岡、長岡京、福知山、舞鶴、京丹後など、それぞれ異なる文化や産業を持つ地域が存在する。

クラブが全26市町村をホームタウンと位置付けることは、「京都ハンナリーズ=京都市のチーム」という構図から、「京都府全体のチーム」へとクラブの役割を広げることを意味する。実際にクラブは26市町村への訪問などを通じ、各自治体との連携強化を進めている(京都ハンナリーズ, 2026b)。

4.京都という地域をスポーツでつなぐ

京都府は南北に長く、地域によって生活圏も異なる。京都市内の住民と京都府北部の住民が、日常生活で同じイベントに参加する機会は必ずしも多くない。しかしスポーツには、その境界を越えて共通の対象を生み出す機能がある。京都市の人も舞鶴市の人も京丹後市の人も、「京都ハンナリーズを応援する」という一点では同じ立場になる。

全26市町村をホームタウンとしたことは、クラブが地域間をつなぐ媒体となる可能性を高めた。これは観客数の拡大だけでなく、各地域の住民が「京都」という単位をスポーツを通じて共有することにもつながり得る。

5.距離という壁を越えるキッズドリームバス

2025-26シーズンにも、京都府北部などから子どもたちをホームゲームへ招待する「キッズドリームバスツアー」が実施された。B.LEAGUEの活動報告によれば、京都府北部を中心に3台のバスが運行され、京丹後市・福知山市、舞鶴市、綾部市・南丹市・亀岡市などから合計60人が参加した(B.LEAGUE, 2026)。

人数だけを見れば大規模な事業には見えないかもしれない。しかし重要なのは、クラブが「来られる人だけ来てください」という姿勢ではなく、アクセスが難しい地域まで迎えに行っていることである。京都市中心部から離れた地域に住む子どもにとって、プロバスケットボール観戦には交通費、移動時間、保護者の負担など複数の障壁がある。クラブ側がその障壁を取り除くことで、居住地域によるスポーツ体験の差を縮めることができる。

6.児童養護施設197人をホームゲームへ

地域貢献の対象は、地理的に遠い子どもだけではない。2025-26シーズン、京都ハンナリーズはホームゲーム30試合を通じて、京都府内の児童養護施設の子ども計197人を招待した(京都ハンナリーズ, 2026c)。子どもたちは試合を見るだけでなく、応援グッズを受け取り、キッチンカーで食事をし、試合終了後にはコート上で記念撮影をするなど、ホームゲーム全体を体験した。

この点は重要である。地域貢献を単に「無料チケットを渡すこと」で終わらせず、「アリーナで楽しい一日を過ごす体験」として設計しているからである。スポーツクラブが提供できる価値は物品だけではない。記憶に残る体験もまた、地域への還元なのである。

7.スポーツ体験の裾野を府内全域へ

2025-26シーズンには、京都府内の小・中学生を対象にホームゲームを無料で観戦できる招待企画も実施された。クラブは全26市町村をホームタウンとしたことを背景に、府内全域の児童・生徒に試合観戦の機会を提供した(京都ハンナリーズ, 2026d)。

こうした取り組みは、地域貢献を京都市内だけに限定せず、府全域へ広げるというホームタウン政策と整合している。観戦経験の入口を広く設けることは、競技人口の拡大だけでなく、将来のファン形成や地域への帰属意識の形成にもつながる可能性がある。

8.新アリーナと地域にもたらす可能性

京都ハンナリーズの地域への影響を考える際には、将来のアリーナ整備も重要な要素である。クラブはB.PREMIERを見据え、京都府が進める向日町競輪場敷地内の新アリーナ構想を重要な経営基盤として位置付けてきた。2023-24シーズン終了時のクラブ発表では、8,000人以上の国際大会を誘致できる規模で2028年完成を目指す構想が説明されていた(京都ハンナリーズ, 2024)。

大規模アリーナは試合会場にとどまらない。数千人規模の来場が継続すれば、交通、飲食、小売など周辺産業への需要が生じる。また京都は世界的な観光都市であり、将来的には従来型の観光にプロスポーツ観戦という選択肢が加わる可能性もある。ただし、その経済効果の規模については実際の施設稼働後の検証が必要であり、現段階では可能性として捉えるべきである。

9.三年間で何が変わったのか

2023-24から2025-26までの三年間を見ると、京都ハンナリーズの変化が明確になる。2023-24シーズンには観客数が急増し、企業との地域貢献活動が本格化した。2024-25シーズンには33勝27敗まで競技成績が向上し、市民無料招待や京都府北部の子どもへの支援が拡大した。そして2025-26シーズンには京都府全26市町村がホームタウンとなった。

つまり活動範囲が「チーム」から「観客」へ、さらに「京都市」から「京都府全体」へ広がってきたのである。これはクラブの事業拡大だけでなく、プロスポーツクラブが地域社会のさまざまな主体をつなぐ基盤へ変化してきた過程と捉えることができる。

10.まとめ

2025-26シーズンの京都ハンナリーズは20勝40敗に終わった。競技面では明確な課題が残った一年である。しかし同時に、京都府全26市町村をホームタウンとし、府北部などから子どもを招待し、児童養護施設の子ども197人にアリーナ体験を提供するなど、地域との接点を大きく広げた。

そこから見えてくるのは、プロスポーツクラブの「強さ」には少なくとも二つの側面があるということである。一つは試合に勝つ競技力、もう一つは地域から支持され、社会との関係を継続的に構築する力である。京都ハンナリーズはこの三年間で後者を大きく育ててきた。今後は、築いた地域との関係を維持しながら競技面でも結果を残し、スポーツ観戦を京都の地域文化として定着させられるかが重要になる。

参考文献

B.LEAGUE(2026)「日本生命×京都ハンナリーズ キッズドリームバスツアー」B.LEAGUE Hope × 日本生命 地域を元気に!バスケACTION。https://www.bleague.jp/chiiki-genki/2025-26/kh/(最終閲覧日:2026年10月1日)

京都ハンナリーズ(2024)「2023-24シーズン終了のご挨拶」2024年5月6日。https://hannaryz.jp/news/detail/id=20638(最終閲覧日:2026年10月1日)

京都ハンナリーズ(2025)「セレモニーレポート 京都府全26市町村がホームタウン」2025年5月3日。https://hannaryz.jp/news/detail/id=21377(最終閲覧日:2026年10月1日)

京都ハンナリーズ(2026a)「成績」京都ハンナリーズ公式サイト。https://hannaryz.jp/stats/(最終閲覧日:2026年10月1日)

京都ハンナリーズ(2026b)「ホームタウン26市町村 はんニャリン・はんなりんMARIA訪問」2026年6月12日。https://hannaryz.jp/report/detail/id=24531(最終閲覧日:2026年10月1日)

京都ハンナリーズ(2026c)「ホームゲームへの児童養護施設のお子様ご招待企画」2026年6月26日。https://hannaryz.jp/report/detail/id=24590(最終閲覧日:2026年10月1日)

京都ハンナリーズ(2026d)「京都府内の小・中学生限定!家族のお出かけ応援!京都府こども無料招待で京都ハンナリーズの応援にいこう!」2026年3月23日。https://hannaryz.jp/news/detail/id=21981(最終閲覧日:2026年10月1日)

引用表記

片岡亮(2026)「Bリーグにおける京都ハンナリーズの活躍と地域貢献が地元にもたらす影響(2025-26シーズン)―京都全域へ広がったクラブとB.PREMIERへの転換―」一般社団法人京阪マーケティング・リサーチ機構 研究レポート.https://www.keihan.or.jp/research/reports/hannaryz-2025-26/

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