研究レポート
Bリーグにおける京都ハンナリーズの活躍と地域貢献が地元にもたらす影響(2024-25シーズン)
― 勝利と地域社会の広がりが重なった飛躍の一年 ―
本レポートは査読を経ていません。記載内容は著者の見解であり、言及した団体・企業の見解を示すものではありません。
1.はじめに
2023-24シーズンが京都ハンナリーズにとって地域社会との関係を大きく拡大した一年だったとすれば、2024-25シーズンは、その基盤の上に競技成績が追いついてきたシーズンだった。京都ハンナリーズは60試合を33勝27敗で終え、6シーズンぶりとなる勝率5割以上を達成した(京都ハンナリーズ, 2025a; 2025b)。前年の17勝43敗から、一年間で勝利数は16増加した。
同時に地域貢献活動もさらに広がり、京都市民4,000人の無料招待、京都府北部の子どもたちを対象とした観戦バス、学校へのバスケットボール寄贈など、「プロスポーツを一部のファンだけのものにしない」取り組みが進められた(京都市, 2026; B.LEAGUE, 2025; 京都ハンナリーズ, 2025c)。競技面と地域面の二つが同時に前進したことが、このシーズンの最大の特徴である。
2.33勝27敗――京都が「勝つ喜び」を共有する
2024-25シーズンの京都は33勝27敗、平均得点82.0点、平均失点80.0点を記録した(京都ハンナリーズ, 2025a)。前年は平均得点77.3点、平均失点84.6点であり、攻守の数値はいずれも改善した。
プロスポーツにおいて勝利が地域にもたらす効果は大きい。勝利すればニュースやSNSで取り上げられる機会が増え、普段バスケットボールを見ない市民にもクラブ名が届きやすくなる。また、観戦者に「もう一度見たい」という感情が生まれやすくなる。特にホームゲームでの勝利は、数千人が同時に喜ぶ共同体験を生み出す。クラブが強くなることは、単に順位が上がることではなく、京都という地域が一緒に喜ぶ機会が増えることでもある。
3.「観客4,000人」が日常になる
さらに重要なのは、前年に初めて達成した平均来場者4,000人以上を2024-25シーズンも維持したことである。クラブはシーズン終了時に「2年連続の来場者数平均4,000人超え」を公表している(京都ハンナリーズ, 2025b)。
一度だけ4,000人を超えることと、二年間続けることには大きな違いがある。前者はイベントや一時的な人気によって実現できる可能性がある。しかし二年間継続するためには、一定数の市民が「ハンナリーズを観に行く」という行動を生活の中に組み込む必要がある。京都において、プロバスケットボール観戦という文化が徐々に定着し始めたことを示す一つの材料と考えられる。
4.4,000人の京都市民を無料招待
2024-25シーズンの地域貢献で特に注目されるのが、京都市との連携による市民無料招待である。京都市の公民連携型スポーツ活動支援事業を活用し、1試合500人、計8試合で合計4,000人の京都市民を対象とした無料招待が実施された(京都市, 2026)。
この施策の重要性は、これまで試合を見たことがない人をアリーナへ連れてくることにある。プロスポーツには、興味はあってもチケット購入や費用など、最初の観戦までに心理的・経済的な壁が存在する。無料招待はその壁を下げる。一度アリーナで音響、照明、応援、選手の身体能力、観客の熱気を体験することは、新しい地域住民をスポーツ文化へ参加させる入口になり得る。
5.京都府北部の子どもたちへ
さらに興味深いのが「キッズドリームバス」である。京都府は南北に長く、ホームアリーナが京都市内にある以上、舞鶴市、福知山市、京丹後市など府北部に住む子どもにとって試合観戦は容易ではない。2025年4月には舞鶴市28名、福知山市30名の親子を専用バスで試合会場へ招待する取り組みが実施され、5月には京丹後市での実施も予定された(B.LEAGUE, 2025)。
これは地域貢献を考える上で重要である。「京都のクラブ」と言いながら活動が京都市だけに集中すれば、府北部の住民にとってクラブは遠い存在のままである。クラブ側から子どもたちのところへアクセスし、移動手段まで用意することで、地理的な格差を縮小しようとしたのである。
6.企業・行政・クラブによる新しい地域貢献
京都ハンナリーズの地域活動には、クラブだけで実施するのではなく、行政や企業を巻き込むという特徴がある。市民無料招待では京都市と支援企業、キッズドリームバスでは日本生命、ボール寄贈では地域企業と学校が関係する。2025年4月のボール寄贈では14社の協賛により255球が寄贈された(京都ハンナリーズ, 2025c)。
つまり京都ハンナリーズは「地域貢献をする主体」であると同時に、「地域貢献をしたい企業や行政を結び付ける場所」になっている。この仕組みは、プロスポーツクラブが地域社会に存在する大きな意味の一つである。
7.子どもとクラブとの長期的関係
子どもへの取り組みには即効性のある経済効果だけでは説明できない価値がある。例えば10歳の子どもが初めて京都ハンナリーズの試合を見る。その経験からバスケットボールを始めるかもしれない。中学生、高校生になっても試合を観戦し、大人になれば自分でチケットを購入する。そして将来、自分の子どもを連れてアリーナへ行く可能性もある。
プロスポーツ文化とは、このような世代を超えた体験の積み重ねによって形成される。京都ハンナリーズが子どもへの投資を続ける意味は、数年後だけではなく10年、20年後に現れる可能性がある。
8.B.PREMIER参入と京都
2024-25シーズンまでに京都ハンナリーズは、2026年に始まるB.PREMIERへ向けた基盤を整えてきた。新リーグ構想では競技成績のみならず、入場者数、売上高、アリーナなどクラブ経営の持続性に関する要件が重視された。京都では2023-24シーズンに平均4,345人を達成し、2024-25シーズンにも平均4,000人超を維持した(京都ハンナリーズ, 2024; 2025b)。
このことは、クラブの将来が選手や経営陣だけで作られるのではなく、試合へ足を運ぶ市民や支援企業によっても支えられていることを示す。プロスポーツの発展と地域社会の参加が相互に関係する構造が形成されてきたのである。
9.まとめ
2024-25シーズンの京都ハンナリーズは、33勝27敗という成績を残し、6シーズンぶりに勝率5割以上を達成した。しかし、このシーズンの価値は33勝という数字だけではない。二年連続で平均4,000人以上を動員し、京都市民4,000人を無料招待し、京都府北部の子どもたちをホームゲームへ連れてきた。
そこでは「見る人」「プレーする子ども」「支援する企業」「行政」が、京都ハンナリーズを中心として結び付いている。2023-24シーズンに地域へ広げた根が、2024-25シーズンには競技面での結果と結び付き始めたのである。京都ハンナリーズはこの一年で、「京都に存在するプロチーム」から「京都の人々が参加して作るプロスポーツクラブ」へとさらに一歩進んだと言える。
参考文献
B.LEAGUE(2025)「京都ハンナリーズ B.LEAGUE Hope × 日本生命 地域を元気に!バスケACTION『日本生命×京都ハンナリーズ キッズドリームバス』」https://www.bleague.jp/chiiki-genki/2024-25/kh/(最終閲覧日:2026年10月1日)
京都市(2026)「Sports Fund~公民連携型スポーツ活動支援事業~を活用した事業」京都市文化市民局。https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000335704.html(最終閲覧日:2026年10月1日)
京都ハンナリーズ(2024)「2023-24シーズン終了のご挨拶」2024年5月6日。https://hannaryz.jp/news/detail/id=20638(最終閲覧日:2026年10月1日)
京都ハンナリーズ(2025a)「成績」京都ハンナリーズ公式サイト。https://hannaryz.jp/stats/(最終閲覧日:2026年10月1日)
京都ハンナリーズ(2025b)「2024-25シーズン終了のご挨拶」2025年5月4日。https://hannaryz.jp/news/detail/id=21372(最終閲覧日:2026年10月1日)
京都ハンナリーズ(2025c)「パートナー企業様との共同企画 ボール寄贈プロジェクト」2025年。https://hannaryz.jp/news/detail/id=21349(最終閲覧日:2026年10月1日)
